ゼロ・サウンド・テクスチャー

ゼロ年代中期のエレクトロニカ・アルバムの100作レビュー。

ゼロ・サウンド・テクスチャー/第5回

●今回で5回目。つまり50枚目。ということは100枚への折り返し地点。00年代中期の日本人音楽家の作品を集めました。

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[CD]AUS『Lang』

Yasuhiko HukuzonoによるAUS、その06年の4th。柔らかい音色のエレクトロニカ・ポップと思いきや、複雑なドラム・プログラミングが楽曲全体で展開される。オウテカ経由の90年代的ビート(ドラムンベーズ、ブレイクビーツ)の00年代的な展開に唸る。


[CD]Portral『Refined』

REFINED

REFINED

あのInner Scienceのノン・ビート・アンビエント・プロジェクト。レコードから抽出された、その柔らかくも繊細なサウンド・レイヤーによるサウンドは、ミッド・ゼロの「アンビエント・ワークス」。何度聴いても新たな時間が生成する。06年。


[CD]el fog『Reverberate Slowly』

Reverberate Slowly

Reverberate Slowly

ベルリン在住Masayoshi Fujita=el fogのデビューアルバム。深い音像のミニマル・エレクトロニカ。マイクロなビートに、淡いキーボード、オールドタイミーなジャズも…。深夜に満ちていくモノクロームサウンド。07年。


[CD]Inner Science『Forms』

FORMS

FORMS

色が飛び散るようなブレイク・ビーツに耳も眩む。カラフルというよりは黄金、光のようなサウンド=色彩の流れ。そして、音と音の「間」。そう、つまりグルーブ。フリーフォームなリズムの奔流が、ビート・ミュージックの新たな道を切り拓いた。07年。


[CD]LisM『Reverso』

reverso

reverso

ハードテクノを生みだしてきたGO HIYAMAの柔らかなビートとサウンドによる、美しいブレイク・ビーツ。色彩のようにアブストラクトなリズムが世界を揺らす。エレクトロニカにビートの遺伝子を注入した傑作。日常の空気感に心地よく融合する。07年。


[CD]Minoru Sato(m/s. SASW)+Asuna『Texture in Glass Tubes and Reed Organ』

Texture in Glass Tubes and Reed Organ / テクスチャー・イン・グラス・チューブ・アンド・リード・オルガン

Texture in Glass Tubes and Reed Organ / テクスチャー・イン・グラス・チューブ・アンド・リード・オルガン

空気オルガンとガラス管を用いた音の物理現象ドローン。もしくは自然の中で鳴らされるドローン。JON GIBSONの作品のように快楽的だ。07年。


[CD]Snoweffect『Invisible Gardens』

invisible gardens

invisible gardens

涼音堂茶舗からリリースの3人組ユニット。繊細なエレクトロニカに思わせながらもボトムのしっかりとしたトラックを展開。コンセプト「観光系」「空間系」を体現するサウンドはまるでYMOのミッド・ゼロ的な発展のようだ。07年。


[CD]Soundworm『Instincts And Manners Of Soundworm』

instincts and manners of soundworm

instincts and manners of soundworm

庄司広光ソロ・プロジェクト。ディープ・イージー・リスニング電子音楽。世界に融解する波、世界を遊離する音の粒子、世界を変える旋律の妙が音響の彼岸を鳴らす。音の世界・世界の音、の旅。07年。


[CD]Filfla『Frolicfon』

frolicfon

frolicfon

あのFourColor/fonicaの杉本佳一によるソロ・プロジェクト。佐治宣英の驚異的なドラミングが大々的にフィーチャーされており、エレクトロニカのオリジネイター自らそのサウンドの拡張を図る意欲作。しかし仕上がりが断然ポップ。傑作。08年。


[CD]Kyo Ichinose『Protoplasm』

STARNET MUZIK 013 PROTOPLASM Original recording

STARNET MUZIK 013 PROTOPLASM Original recording

ミニマルで美しいピアノの響きに、電子音やフィメール・ヴォイスが絡み合う。エレクトロニカという枠を超えた、美しい旋律と編曲と音色で綴られる柔らかな電子音楽。記憶の中の風景のような音の連なり。08年。