ゼロ・サウンド・テクスチャー

ゼロ年代中期のエレクトロニカ・アルバムの100作レビュー。

ゼロ・サウンド・テクスチャー/第11回

[CD]I8u + Tomas Phillips『ATAK013 Ligne』

ATAK013リーン

ATAK013リーン

ドローンやフィールド・レコーディングが、何よりもインプロヴィゼーションコンポジションへと転換する音楽であること。柔らかい音と硬質な音の織り合いから生まれる「響き」であること。空気を変える高音のクリスタルのような音響作品であること。何度聴いても飽きない。傑作。09年。


[CD]POMASSL『Spare Parts』

Spare Parts

Spare Parts

硬質な電子ノイズが自在に行き交うPOMASSLのアルバム。その物質的かつ生物的な電子音の動きが快楽的だ。破天荒に聴こえつつも、その実、非常に落ち着いている点も面白い。「冷静さ」と「破格さ」の見事な共存がここにある。ラスター・ノートン。07年。


[CD]Preston Swirnoff『maariv』

リゲティやラ・モンテ・ヤングなどに影響を受けたカルフォルニアの音楽家、08年作品。ピアノやオルガン、ギターやテープなどをエレクトロニクスと共に加工。ガラスが飛び散るような硬質な音響から、豊穣なドローンまで。70年代電子音楽のごとき激シブ音響作品。


[CD]STEINBRUCHEL『MIT OHNE』

高密度の雨音のように、高精度の線と点が音空間を垂直に運動する美しい音響作品。個人的には00年代後期の電子音響/エレクトロニカの傑作の一つと思っている。わずか18分に圧縮された美しい音響の結晶。本当に素晴らしい。12Kから。08年。


[CD]Yair Etziony『Flawed』

Flawed / フラウィド

Flawed / フラウィド

アンビエント/ドローン作品を中心にリリースするSPEKKにおいては極めて異色のビート・アルバム。イスラエルの音楽家の作品。クリック風のビートに、ピアノを加工した音響が見事に融合。ラスター・ノートン風だが音響はスモーキー。07年


[CD]Oren Ambarchi『Grapes From The Estate』

Grapes From the Estate

Grapes From the Estate

Oren Ambarchiの04年にリリースされた3rdにして傑作。レーベルはTouch。ミニマルなギターが鳴り、ノイズやドローンと共に音響をかたち作る。楽器も大胆に導入し、その持続と切断と展開、緊張感と心地よさが耳をうつ。ジャケットも美麗。


[CD]AMPLIFIER MACHINE『HER MOUTH IS AN OUTLAW』

Her Mouth is an Outlaw

Her Mouth is an Outlaw

12Kの異色作で、何とバンド編成のドローン作品である。08年のリリースだが、12Kの「その後」を模索していた時期ともいえるだろう。しかし、こんなに繊細なサウンド・トリートメントのドローン作品は稀だ。個人的には愛聴しているアルバム。


[CD]LEVEL『Opale』

Opale / オパール

Opale / オパール

Barry G Nicholasの2nd。ジャスピアニストLinden Haleとサウンド・アーティストKeith Berryの演奏を緻密に加工。ピアノの響きの美しさはそのままに、独自の音響を展開する。破壊されたガラスのような煌めき。spekk。08年。


[CD]Max Richter『24 Postcards In Full Colour』

24 Postcards in Full Colour

24 Postcards in Full Colour

彼の音楽には芯がある。ピアノ、弦、ノイズやフィールド・レコーディング、ささやかな音響の連なりであっても響かせるべき音を分かっているからか。まさに寒い冬の光景のような音楽=音響。まさにシネマティック。08年。


[CD]Konntinent『Degrees, Integers』

Degrees, Integers

Degrees, Integers

ロンドンのAntony Harrisonのファースト・ソロアルバム。物悲しいギターと繊細なドローン、ノイズなどのレイヤーと反復によるポストロック・ミーツ・アンビエントな作品だ。中編映画を見るかのような音楽=音響。Home Normalから出たセカンドも良い。09年。